あなたならどうする?沖縄旅行で「日本最南端」のホールを見つけた結果
うちの夫婦は子どもを作っておらず、さらにお金の掛かる趣味もないので、ちょっと前まで余ったお金でちょくちょく旅行に行っていた。ただ、世話をしてくれる人がいるとはいえ猫がいるので、あんまり長期間は無理。だので、旅も国内がメインだ。もちろん今はコロナの影響で行けてないけどもね。
3年前だろうか、2人して沖縄に行った。
沖縄本島から石垣に渡って2泊。そこから波照間で2泊。そもそも沖縄に足を踏み入れたことがない筆者と違い、妻は沖縄という土地が好きらしく、筆者と出会う前からちょくちょく1人で遊びにいってたらしい。筆者は別に「こういうのは何でもかんでも男が決めねばならん」とかそういう風に主導権を欲しがるタイプではなく、むしろ詳しい人がいるならそっちに全部ブン投げて全力で乗っかる性格ゆえ、旅程から宿の手配まで全部おまかせした次第。
んで当時だ。
「じゃあね。行ってくるぜピノコ」
「ちゃんとマスターの言うこと聞くんだよ」
しばしの別れ。せめてものよすがに愛猫にチュールを食べさせたあと家を出る。前日に馴染みのバーのマスターに部屋の合鍵を渡しており、この子のご飯と水、そしてトイレの交換は彼がやってくれる事になっていた。
浅草から羽田へ。そこから飛行機に乗って那覇空港へ。2時間ほどの空の旅だが、オフラインでできるスマホゲームをいじってるうちにすぐ終わった。まったく、ライト兄弟は地球を狭くしてくれたもんである。
「うわ、沖縄暑いな……!」
「沖縄だからね」
東京では既に長袖の上にもう1枚羽織ってもいいくらいの季節になってたけど、沖縄は流石に沖縄だった。まだ夏の終りか、少なくとも秋口くらいの気温である。空港のトイレで上着を脱いでTシャツ姿になるとちょうどいい感じだった。言っても同じ日本だしそんなに季節に違いはねぇだろうという筆者の判断は甘かった。なんせここは緯度的には日本よりホノルルに近い。
「沖縄が暑いって大げさに言ってるだけかと思ってた……」
「いやいや……。小学生でも知ってるでしょそんなの」
「だって、東京はもう冬に近いんだぜ。これ夏じゃん沖縄。……たかだか飛行機で2時間ちょいでこんな変わるとはねぇ」
何事も、実際に体験してみないと分からんもんである。普段インドア派極まりない生活を送ってる筆者は何事も本やらネットからの知識に頼り切りになってしまっており、こういう形の体感型の記憶というのは大変良い刺激になる。
空港から電車に乗って国際通りまで出る。それから散歩してちょっと買い物をしたあと、よくテレビなんかで見かける沖縄のハンバーガーチェーンである「A&W」にて軽く食事をとった。ここから石垣までは再度飛行機に乗って移動するのだが、予定時刻まで3時間ほどの余白をとっているので、散策がてら商店街などを歩いて過ごした。
「おお……。はるちゃん、あったよアレ……」
「……え? あー……。パチンコ?」
「うん。ちょっと行ってきていい?」
「じゃあ、15分だけね。わたしそこで買い物してくるから」
「よっしゃ!」
旅先で、筆者よくこうしてちょっとだけパチンコに行く。パチンコホールって日本全国大体似たような感じではあるのだけども、そこはかとない地域差みたいなのはやっぱりある。大阪のパチンコ屋さんは如何にも大阪だし、北海道のパチンコ屋さんはなんとなく北海道っぽい。具体的に何がどうとは言えないけども、差し込んでくる肌感覚みたいなのが、明らかに違うのだ。
生まれて初めて入る沖縄のホール。
一目散にパチスロのフロアに向かって、そこで筆者は息を飲んだ。ホントだ。あったよ。これだこれ。これを打ちたかった……! 薄暗いホール。立ち並ぶハナハナシリーズの奥に、如何にも沖縄では自分がジャグラーですけど? みたいな顔して立ち並ぶ、見たことない機械。「トリプルクラウン」である。
これ、かなり有名な機種だけども実際に打ったことがある人は結構限定的である。何故なら沖縄にしか設置がない機種だから。理由は知らんが、一節によると沖縄ではこの機種が覇権をとっているため、似たような告知機である「ジャグラー」の設置比率が低いと言われているそうな。……なんかオオスズメバチが強すぎるせいでセイヨウミツバチが野生化しない、みたいな話である(そうか?)
かくいう筆者もトリプルクラウンの実機を見るのはこれが初めて。動画などでは何度か見たことがあるのだけども、やっぱ実物を目にすると感動しちゃう。
(俺は今、ホントに沖縄にいるんだ……!)
那覇空港でTシャツに着替えた時と同じか、あるいはそれ以上の実感がいきなり湧いてきた。それまでどこか上の空だったけど、これから4日間の沖縄旅行が俄然現実のモノとしてグッと近づいてきて、急に楽しみになった。
……奥さんにとっちゃとんでもない話だろうけど、筆者の沖縄旅行はここで始まったのだった。
その後、2人してしばし買い物や散策を楽しんだのち、空港から石垣島へ移動。道端で当たり前のように咲き乱れるハイビスカスに腰を抜かしつつ、ホテルに向かう。
「……あれ、タクシー乗るの?」
「うん」
「ホテル結構遠いんでしょ?」
「いや、ホテルまではいかないよ」
タクシーの運転手に行き先を告げる妻。連れて行かれた先は空港から出てすぐの所にあるレンタカーショップだった。ああ、そういえば「レンタカーを借りる」とか行ってた気がする。
「うわ、ホントに車借りるんだ……」
「うん。運転できるでしょ、ひろし」
「できるけど……自信ないなぁ……」
「大丈夫でしょ。保険はいるし」
筆者、東京に越して以来一度もハンドルを握っていない。もう10年以上だ。運転してた期間より、しなくなってからの方が長いかもしれない。控えめに言って、運転できる気がしない。正直に告げると、妻は「じゃあわたしが」と言って運転席に乗り込んだ。妻も相当ペーパードライバーである。
「……ヒィ! 車間距離近くない?! ちょ! 左寄りすぎじゃない?」
「ちょっと黙ってよもう、仕方ないでしょう久しぶりなんだから……!」
車が動き始めて3分くらいで「これは俺が運転するのとあんまり変わらん」とすぐ判断した。ヒィとかギャーとか言いながら助手席に座るのはマンガとかで良くあることだけど、リアルで体験したのは初めてだった。ただ、実際には彼女の運転は非常に丁寧であり。単純に事情を知る筆者がビビってただけである。
こうして、2人で運転を代わりばんこしながら、ホテルに到着。荷物を運び。その日は近所で居酒屋を見つけて海の幸を堪能した。
翌日。本格的な旅行の始まりである。
まずは石垣島周囲のドライブ。真っ青な空の下、iPhoneで沖縄の民謡をかけながら、窓を全開で疾走するのは超楽しかった。2時間ほどハンドルを握るうちに運転にも慣れ、「運転にブランクなし」という格言を思い出した次第。日本の教習所はやっぱ高いだけあって優秀である。岬や湾。牧草地帯や橋。森や海や川を見て、それから国道に戻った時、筆者の目には信じられないものが見えた。
「おい、はるちゃん……ちょっとゴメン。戻っていい?」
「どうしたの?」
「何かさ、今ね、パチンコ屋があってね」
「うん」
「日本最南端! って書いてあってさ……」
「あー……それはひろし、行かなきゃねぇ」
「ちょっと、見てきていい?」
「じゃあさ、私は先にホテルに帰って飲んでるから、ひろし送ってよ」
「うん。わかった──!」
嫁をホテルに送り、そのままUターンして先程の店に向かう。途中で気づいたけど、自分で運転してホールに向かうのは本当に久々だ。まだ田舎に住んでた頃の、若い時代に帰ったようで、嬉しくなった。ウインカーを上げる。対向車をかわして駐車場に入る。バックから停める。サイドブレーキを引いてエンジンを止める。たったこれだけの動作が、無性に楽しかった。ドアを開けて車を降りる。パチンコ屋さんに入る。どうだ、おれは運転してきたんぞ。と、何か誇らしい気分になった(40歳)。
そして対戦相手はまた「トリプルクラウン」。
どうせならお店の中でも一番最南端に設置してある台にしようとコンパスアプリで計測して、ちょうどカド台に座って暫く遊技する。秒速で2万円溶けた。全然当たらない。んで当たらないとどんどん心が弱っていくもので、旅先で嫁さんを1人にしてるのが不安になってきた。帰ることにする。ただ、最後に「トリプルクラウンを抜きにして、この店で一番『南』にある機種なんだろう」と思って、再度ちゃんと計測してみた。一番南の機種が横並びで複数あったらヤダな、と思ったけど、南の方向に垂直に並ぶシマだったので、明らかにコレが最南端だ! という台がわかった。
それは「CR熱響!乙女フェスティバル」だった。
……つまり、その時点で「日本で一番南」に設置されていた認可機は、それであります。これリアルタイムでクイズとかにしてたら結構面白かったんだけど、思いつきだったんで特にどこで記事化するとかは無く。ただ勝手に最南端の機械を探して、あとトリクラで2万負けただけだった。
その日はその後、「石垣牛」を食べたい! という嫁の要請に応じる形でタクシーに乗り(俺も酒飲むからね)、運ちゃんおすすめだというお店でガッツリ喰った。少食な2人で3万くらいだったんだけど、まあ、信じられんくらい柔らかいお肉でございました。
で、翌日だ。石垣から波照間に移動する日で、まあ起きたのも遅かったし、お土産買ったりだとかでバタバタとするわけですが、もうやり残したことはねぇし慌てずに楽しくいこう! とか思ってたら、港の近所でとんでもないものを見つけてしまった。背後に流れる景色をバックミラーで確認し、舌打ちする。
「チィッ! ……日本最西端の沖スロ専門店だとッ!」
という立て看板だ。ちょっとまった。そうだ! 石垣島は最南端であると同時に、最西端でもあるのだ。思わずウインカーを上げてコンビニに車を入れる筆者。
「やばいはるちゃん、迂闊だった!」
「……聞こえてたわよ」
「ごめん、10分だけ行ってきていい?」
「まー……船が出るまで結構時間ないけど……いっか。わたしお土産買ってくるから、行っといで」
「ありがとう──!」
制限時間10分。とりあえずダッシュでお店に向かい、律儀に最西端の台を探す。あった。これだ。ハナハナだ。ウオオオ! と心の中で雄叫びを上げつつ滑り込むように着座し、千円札をサンドにブチ込む。大丈夫! 俺は今まで沖縄では1回も当たってない! 余裕で消化できる! フルウェイト! フルウェイト!
「あッ!」
なんてこった目の前のハイビスカスがブリンブリンと交互に点滅してやがる。当たっちまった。やべえ。せめてビッグ! と思ったらレギュラーだ。最悪である。流しづらいし消化時間もねぇ。ボーナスを消化したあとオニのような勢いで全部飲ませる。ギリギリセーフ。間に合った。さあ嫁さんと合流だ、と額の汗を拭うと、台の上にポップが貼ってあるのが目に入った。
(日本最西端のパチスロホール、遊技証明書発行中)
なんやそれ! マストやんけ! 絶対欲しい! おしっこ漏れそうなのかくらいの勢いで立ち上がってカウンターに向かう。
「すいません、遊技証明書ください!」
「あ、はい。じゃあ……これ被ってください……」
何かデカいハイビスカスの被り物を渡される筆者。
「これは……」
「ははは(笑)」
何故か笑うスタッフさん。筆者もつられて笑う。とりあえずそれをかぶって写真スペースに向かうと、「どうぞお好きにポーズを取ってください」みたいな感じでいわれる。ポーズ……。ポーズだと……。と、しておる所で電話がなった。
(ひろし、もうおわった。お店の前でまってるよ)
(ちょっ、ちょっとまって……ちょ……)
(もしかして当たってる感じ?)
(いや、そうじゃないのだが……今──これ何て説明すればいいんだ?)
オッサンがひとりでハイビスカスをかぶりポーズを取ってる。とりあえずゴメン! と電話を切って、そしてハイポーズ。ぱしゃり……!
……その写真が使われた「遊技証明書」は、何気に今でも筆者のお守りとして財布に入っており。あの旅行の、3番目くらいに大切な思い出になっているのだった。
もちろん、嫁は若干不機嫌だったけど、これはもう、しょうがない。だって筆者は旦那であるのと同じくらい、スロッターなのだから。
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