ゲーム版ジャグラーのラスボスに住み込み市場調査!?ガリぞうの「特殊な仕事」【収支日記#10】
先週もお伝えした通り、当企画「ガリぞうの収支日記」は一ヶ月ほど番外編でお送りさせて頂きます。
今週のお話は「特殊な仕事」です。元々私は一般的なパチスロライターと大きく違った経歴を歩んできました。どこかに履歴書を送って今の立場を志願した訳でもなければ、関東圏に住んで自ら横のつながりを作ろうとせず北海道在住のまま21年間やってきました。パチスロの攻略を得意としているのに攻略誌に属さず漫画誌で長年続けてきましたし、あくまでライター業は二の次として稼働収入主軸で生活しようと努めるタイプも今の時代では希少種かもしれません。
そんなレアキャラだからこそのお仕事が過去にいくつかありました。あくまで特例だとは思いますが、今週の記事を読んで「パチスロライターってそんな仕事もあるんだ」と知って頂けたら幸いです。
ゲームの開発
時は2006年の秋、「来年頭に五号機のジャグラーが登場するかも?」と言う噂が巷で流れていた頃。私は都内のビルの一室で会議に参加していました。主題はプレイステーション2のゲーム開発についてです。
四号機時代はホールの脇役だったジャグラーが五号機ではメインを狙ってみようというメーカーの意気込みで、大々的な売り口上と共に翌年2007年頭に発売が決定。この五号機初のジャグラー「アイムジャグラーEX」導入に合わせ、プレイステーション2用ソフトの同時発売も決まり、その打ち合わせで開発会議に呼ばれました。
ゲームタイトルは「パチスロ倶楽部コレクション-アイムジャグラーEX~ジャグラーセレクション~」。
最新台の実機がゲームに収録されるという事で注目度を高める意図もあったようです。最新台のアイムに加え、四号機ジャグラーも三機種収録されていて、古参ユーザーの獲得も視野に入っていました。ゲーム内容は一人で遊ぶ他、1Pvs2Pや1PvsCOMの対戦形式も可能で、コンピューターとの対戦では初戦のツノっちから始まり、ラスボスでは私「ガリぞう」が登場します。このラスボスの仕様をどうするかで会議の席が持たれました。
ゲーム制作陣営から提案された内容は、対戦中の場面に合ったジャグラーの知識を私が解説するというモノ。私が用意する台詞はパターン別で256種類あり、それぞれの場面で小ネタを出してほしいと依頼されました。例えばペカり後の1BET時には「四号機のジャグラーは左からBARを狙うとリプレイを取りこぼす事があるので必ず中から押そう!」とか、「3BETじゃなく1BETでボーナスを揃えれば出玉率0.3%~0.4%up!」と私が70文字以内で喋ったり。また、技術介入別で私が算出した数値も載せたいようで、それぞれ細かく計算した確率を提出する事に。
このお仕事を引き受けた理由は「面白そうだから」。キツめの仕事もやってきた古参のパチスロライターですし大体の話は受け入れられますが、あくまで私の根っこはパチスロ生活者。要望だけ聞いて帰る訳にはいきませんし、ここじゃなけりゃ知り得ない話もあるでしょう。何かしら今後の稼働の役に立つ情報を持って帰ろうと質問し始めます。
まず聞いたのは、このゲームが完全移植かどうか。内部数値を変えてゲームを作るメーカーかどうかを知る事ができれば、今後の内部数値の把握にゲームが一役買う事になるかもしれないので、これは大事な情報です。これは後のパッケージにも書かれていた事ですが、完全移植との事でした。実際、昨今の解析できなくなったゴージャグ2やファンキー・スーパーミラクル等でアプリを回して内部数値を把握できているのも、この時の回答が礎になっているおかげです。
また、これも前々から気になっていた話だったので質問してみる事に。
「パチスロメディアでは北電子独自の乱数生成という言葉があります。独自と言うからには疑似乱数に現在の時間を掛けていないのでしょうか。」
現在の時間という二度と同じ値にならない数字を掛ける事で本物の乱数に近づける手法は、プログラミングにおいて主流であり王道の乱数生成方式です。しかし、ゲーム開発の方は首を横に振ります。乱数に時間は掛けていないし、結果として前回の抽選結果に近しい数値を取得する事が多いように見えるとも。つ、ついに北電子独自の連チャンシステムに肉薄する時が……!?一瞬そう思うも、法則性は特に見えないようで、やはり乱数を狙う努力よりも高設定を探した方が堅実だという結論に至りました。
こうして他では聞けないだろう話を矢継ぎ早に質問していたら、あっという間に二時間が経過し、ラスボス「ガリぞう」の仕様も決まっていきました。協議の結果、ラスボスの私は逆押しフルウェイトでベルやピエロも100%獲得する、私本人でも勝てない強キャラになってしまいました。現行のプレイステーションで動くかどうかは知りませんが、遊べる環境にある方はメルカリ等で探して遊んでみるのも面白いかもしれません。
ユーザー視点の市場調査
時期は2016年。今から約四年前の話です。
「別地区では繁盛ホール法人なのに三重県で出店したホールの業績が上がらないのは何故なのか一ヶ月ほど住んで調べてもらえないでしょうか。ただ、多額のお金は出せません。」
こんな依頼を代理店から受けた事がありました。コンサル会社に依頼しても「この地区のパチンコ人口は何人、パチスロ人口は何人」という上っ面の情報しか出てこず、核心に迫る原因を突きとめられないので、長年ユーザー寄りのパチスロライター兼パチスロ生活者としてやってきた人が地域に住み着いてガッツリ立ち回りながら調べれば何かしら新たに見えてくるモノがあるんじゃないかと言う依頼です。
確かにユーザー目線からしか見えない観点もあるでしょうし、「多額の金は出せない」のだから、現場で調査しながらも立ち回ってプラス収支を出し、自力で稼いで生活しなければなりません。これだけでも腕が鳴りますが、この案件は思った以上にハードルが高いです。この依頼を受けたホールはパチンコ・パチスロ併設店。しかし、私にパチンコは分かりません。そこで、今でこそススキノでスロットバー「REG」を営んでいますが、当時はパチンコ主体で生活していた旧友の加藤さんに相談すると、二つ返事で同行の了承を頂きました……が、そうなると一人当りの活動費も折半になります。
ちなみに、頂くギャラから計算すると、一人頭経費込みで一日15,000円位。アイムの設定5にも負ける程度でしょうか。ここから北海道との往復交通費や宿代・食費も出すとなると、ほぼ手元には残りません。
色々と考えた結果、このお仕事を受けさせて頂く事に。費用対効果は著しく低いですが、受けた理由は「面白そうだから」。誰もができそうな仕事じゃないですし、手間や労力よりも新しい事を知り得そうな好奇心が勝りました。ただ、いくら時間の都合がつきやすいパチスロ生活者寄りの立場と言えど、漫画の原作など一応は他にもパチスロライターとしてのお仕事もあったので、期間は一ヶ月じゃなく二週間に縮めてもらいました。
それでも、いざ調査が始まるとなかなかの過酷さを実感。三重県は朝9時開店の夜0時閉店なので、手抜きなく調査するとなると一日15時間勤務になります。夜0時過ぎに宿へ戻り、数店舗・計600台以上のデータをまとめた頃には深夜2時を回ります。そして翌朝また朝9時から稼働&調査となると体力的にも厳しいです。
また、使える経費が少ないのもあり、加藤さんと二人一部屋で一泊3,000円の激安ホテルを選択したのも失敗でした。深夜12時以降はお湯が出なくなるホテルで、そうなると冷水でシャワーを浴びなければなりません。
時期は一月なので、三重県と言えどそりゃ寒いです。
それでも、パチスロは主に私が、パチンコは加藤さんが担当し、こうした生活を続けている者だからこそ可能な調査報告は出来たつもりです。ここでは、その一部をお見せします。
2016/01/15(金) 某A店調査
(朝イチは別店舗調査で割愛)
11時半、地域二番店と思われるA店に到着。既に駐車場がかなり混んでいる。パチンコは11時コーナー開店の牙狼のシマに軍団らしき面々が集っている。時差じゃないコーナーにも見た目の良い台がちらほら。玉積みシマのマックスや海は釘が開いているように見えるが、パーソナルシマのマックスはかなり弱そうに見える。甘コーナーも悪くない調整に見える。
パチスロはニューキングハナハナの一部が11時、沖ドキの一部が18時コーナー開店の模様。
15時。コーナー開店のニューキングハナハナで良さげ台が空いたので打ってみる事に。結局、閉店一時間前まで稼働。
(データは割愛)
推定5・6と思われる台の実戦に成功。稼働中、両隣の打ち方を見ていたが、REG中に白7ビタをやる者は少ない。ただ、私がそれをやるとどの客も首が一瞬動いて私の台のサイドフラッシュを確認している為、設定推測要素の情報としては知っている様子。自分でやるほど必要性は感じていない、もしくはビタが苦手でやらないが、隣がやっているなら一応は見ておくか位の感覚はある客層と思われる。
台の合成確率は私の右隣の方が良かったが、私の台はBIG偏向により3000枚超の出玉を確保。ヤメる際、私が席を立つか立たないか位のタイミングで、私の台より合成の良い台を打っている右隣の客が私の台の下皿に鍵を投げ入れる。この界隈の他人気店同様、やはり設定推測要素よりも出玉で台の良し悪しを測っている客層がA店には多いように見える。18時コーナー開店の沖ドキがオープンと同時に満席になっていた事からも、設定状況よりも煽りの強さが稼動につながりやすいと思われる。
パチンコについても同様で、ボーダーを超えている台は多数あると思われるが、期待値台への執着が強い軍団が押し寄せるほど甘い訳ではないと感じた。海のシマの回しは22~23/Kながらアタッカーがマイナス&スルー足らずで等価ボーダー+3程度。持ち玉で一日回せば二万前後の期待値にはなりそうだが、持ち玉がなくなったので終了。
海のシマは年配客がほとんどで、近隣ライバル店の中でパチンコはA店が最も慎重かつ丁寧に調整されていると思われる。現金投資の人もいたが、貯玉で打っている人は四万発以上の人もちらほら。この貯玉を使いきらせてA店から客を引っ張るには相当厳しそうに思う。
2016/01/18(月) 某B店調査
稼働量的に地域一番店と思われるB店で朝イチから調査。
日付イベントの認知度が高いのか、朝一の並びからして50人以上と多め。この土地で調査を始めて四日目になるが、開店時にガックンチェックしている者を三重県で初めて見る。凱旋で前日からの宵越しを狙っている人も目撃。朝一リーチ目で停止しているハナビを二時間ほど追ってみるが、設定推測要素がイマイチにより撤退。出目による示唆という訳ではなさそう。
18時コーナー開店の魔法少女まどかマギカ計五台を打つ為、コーナー入り口に17:10から並び始める。順番は三番手。17:50に抽選開始。行列は20人ほど。割り箸四本の中に当たりが一本ある昔ながらの抽選方式。一人目はハズレ、二人目は当たりで私の番。ここで、二人目の当たりの割り箸だけ少し黒ずんでいる事に気付く。三番手の私も少し黒ずんでいる割り箸を取ると、やはり当たり。二番手の当選者がカド台を取ったので、私はまどマギのカド2に着席。ただ、後続の常連達も一発で四分の一をサクサク当てているようで、あっという間にまどマギのシマが埋まる。もしかしたら四分の一というのはコーナー開店だけを狙いに来る一見客を排除する為のモノで、黒ずんでいる割り箸が当たりというのは常連の間で暗黙の了解なのかもしれない。となると、B店の常連を大事にしている感が伝わるし、地域一番店にも頷ける。
私のまどマギはマジチャレ当選率が設定6以上なものの、総合すると設定4・5と予想。カド台でプチボ中のキュゥべぇ確認。A店の18時コーナー開店では設定6を使っている可能性が非常に高いと思われる。
閉店後のデータを確認すると、ハナビでもBIG中ハズレを二台で確認。各々の台で粘っている客がいたので、データ履歴に見られる309枚の数字は事実と思われる。北斗・バジリスク絆等のAT機でも高設定濃厚らしきデータが散見される。煽りの強さと中身(設定状況)が伴いにくいと感じるこの地域でも、推し日とされるB店の今日の信頼度は高いと思われる。その事を一般客も知っているのか、市場調査を始めてから全店合わせて最も多くの稼動を今日のB店で確認。
(地域や店舗が特定されないように載せたつもりですが、もし分かってしまったとしても内緒でお願いします。)
こうしてライバル店の報告書やデータを二週間分&六店舗分、そして依頼を受けたホールの改善点を書いて提出し、この業務を終えました。体力的にも厳しく、ぶっちゃけ滞在中の稼働収入は経費で全て消える程度しか得られませんでしたが、身になる経験を積ませてもらって非常に有意義な二週間でした。こうして今この場でも、一般的なライターさんが書けなさそうな記事のネタとして扱えていますから。
以上、特異なパチスロライターがやってきた、特異なお仕事の一部を紹介しました。稼ぎたいだけならパチスロがある私にとって、こうしたお仕事を引き受けた理由は好奇心からであり、やはり二の次感の強いパチスロライター業には面白味を求めてしまいます。おそらくは誰の参考にもならないと思いますが、私の異例な仕事を疑似体験したと思ってもらえたら幸いです。
来週は私が体験してきた「珍しい設定6挙動」についていくつか紹介していきます。とてもじゃないが設定1としか思えない挙動から、設定8が存在するんじゃないかと思える突き抜けた挙動まで、私の経験を皆様の糧にして頂くべく掲載していきます。お楽しみに。
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