【インタビュー】大工職人としてのモノ作り魂が原点/plus・中山雄寿社長
抗菌性に優れた珪藻土トイレマットなどを製造、販売する「株式会社plus」。良いモノの提供にこだわり抜く中山雄寿社長には、大工職人で培ったモノ作りの魂が宿る。氏の足跡を辿った。
親子でパチプロ稼業!?
時は昭和50年代の前半。パチンコ好きの父親の影響で、ホールに出入りすることも珍しくなかった小学生時代。牧歌的な時代だったがゆえの話だが、親子でパチプロ稼業の日々を送っていた。
「親父の知り合いに釘師がいましてね、その人に釘の見方を教わりました。教わった知識を生かし、小学校の工作の授業で、手作りのパチンコ台を作りました。小さい頃から手先の器用さもあって、玉がどう流れるかを考え一本、一本、釘を叩いて(笑)」。
当時のホールはチューリップ台が主役。釘の良し悪しを見分ける眼力で台を選び、あとはひたすら打ち込む。ほぼ毎回、勝っていたと豪語する中山社長。「平日も1人でパチンコを打っていましたね。そんな小学生、私以外にいませんよ」と笑いながら回顧する。
大工職人として弱冠21歳で独立
パチプロ稼業は、10代半ば足らずにして早くも足を洗い、大工職人として人生の次なるステップに歩を進めた。理由は父親の影響である。父親が建築会社を営む大工職人で、中山社長も10歳の頃から現場を手伝う経験があった。そして、10代半ばを過ぎた頃、父親とともに生まれ育った愛知県から広島県へと居を移し、建設現場で汗を流す日々が続いた。
「広島の建築関係者から親父に声が掛かったため、広島に移り住むこととなりました。当時、愛知は広島に比べ、職人のレベルが高かった。実際、親父は仕事が早く腕も良かったので、(広島での)評判もすぐに高まりました」。
名うての職人だった父親の下で、着実にスキルと経験を積んでいった。そして、21歳という異例の若さで独立を決意。職人2人を率いる親方として新たな船出を切ることとなった。
時代はバブル崩壊期。しかし、それまで築き上げた評判もあり、仕事に困るということはなく、大手ゼネコンから直接、指名を受けることも少なくなかったという。
その後、建設業を本業としつつ、中古車や化粧品の販売など経営の多角化に舵を切った。さらに、これらと並行して1997年頃から始めたのがインターネット事業だ。
当時の広島ではパソコンなどほとんど普及していなかったなか、ネットオークションを通じた物品の販売(EC事業)など、精力的に事業を展開。ネット販売は、独創的な手法で爆発的な販売数を記録した。これが評判を呼び、当時の販売手法を聞くため多数のネット販売者が訊ねてくるほどであったという。
一方、本業の建築会社は43歳のとき、仕事の発注元である大手ゼネコン会社に端を発する連鎖倒産のあおりを受け、事業を停止。そのため、ビジネスの軸足は必然的にEC関連の事業に移った。
絶体絶命のピンチ!救ったのは・・
ECに軸足を移した2012年、消臭と吸水性に優れた「珪藻土バスマット」が、 ECサイト上で1日に4,000枚売れるというヒットに恵まれる。しかも、その状況が1年間も続いた。
時を同じくして、ある卸売商から相談が持ちかけられる。珪藻土のマットに除菌剤「Etak」を複合させた業務用製品の事業展開についてだ。販売は、その卸売商が担うと言う。
一度はこの話を断った。開発・製造には多大な資金が必要となるし、そもそも「Etak」についての知識がなかったからだ。しかし既存製品の売れ行きが下火になりつつあったこともあり、卸売商からの誘いに乗ることにした。そして資金を集め、2年を掛けて開発したのが業務用珪藻土トイレマット「NeoPlus抗菌トイレマット」だ。
2015年、満を持して株式会社plusを設立。人も新たに雇って同製品の本格的な事業展開に舵を切った。
しかし、そんな矢先、いきなり想定外の出来事が発生する。上述の卸売商が民事再生状態に陥ったのだ。当然、販売を担うという約束は反故にされた。そのため、製品を中山社長自身が売らなければならなくなった。
計画は大きく狂った。しかし作ったモノは売らなければならない。多大な資金を投入した以上、後戻りは許されない。そのため自らコンビニ、飲食店、病院などにテレアポし、売り込んだ。
必死の営業を1年続けた結果・・・なんと1枚も売れなかった。当初の資金はみるみる枯渇した。そして、残りの資金が底をつきかけ、事業撤退もやむなしというなか、一筋の光明が差し込んだ。最後の賭けとしてわずかな資金でパチンコ業界向けに広告を打った結果、故郷・愛知のホールから問い合わせがきたのである。
同ホールへの導入が決まった時点で、状況は底を打った。時を経たずして、愛知のホールを中心に導入が拡がっていった。
そして、今では約3,000店舗のホールに導入される立派なヒット商品に成長した。また導入先はホール業界にとどまらず医療施設や福祉施設、飲食店、公共交通機関などで、いまも着実に増えているという。
「安かろう、悪かろうの製品だとここまで普及はしなかったと思います。私は手先が器用なこともあり、今でも大工が天職だと思っています。そこで培った職人の技術、魂で、ずっと良いモノを提供していきたいですね」。
中山雄寿(なかやま・ゆうじ)
1967年8月生まれ。10代半ばで大工職人の道に進み、21歳で独立。その後、経営を多角化し、EC事業などを手掛ける。2015年にplusを設立し、業務用珪藻土トイレマットの製造、販売を開始。現在、ビジネスYouTuberも目指して活動中。
株式会社plus
所在地/広島県広島市中区猫屋町2-22-102
設立/2015年5月
総合商社として製造・物流の小売・運搬までの業務を担う。主力の業務用珪藻土トイレマット「NeoPlus抗菌トイレマット」を全国に展開。パチンコホールほか、公共交通機関や大手コンビニ、医療施設など幅広い業種での導入が進んでいる。
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(提供:月刊グリーンべると)
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